高血圧を薬だけに頼らないために 〜生活習慣改善のすすめ〜
高血圧は「サイレントキラー(沈黙の殺し屋)」と呼ばれるように、自覚症状がほとんどないまま、脳卒中や心筋梗塞、腎不全など命に関わる病気を引き起こす重大な疾患です。近年、日本人の3人に1人が高血圧と言われ、年齢とともに増加しますが、決して年齢のせいだけで済ませてはいけません。
高血圧の治療には薬物療法が重要である一方、**生活習慣の見直し(=生活習慣介入)**は薬と同じくらい、あるいはそれ以上に根本的な対策となり得ます。特に初期の高血圧や境界域の方、また薬を使っている方でもより良好な血圧コントロールを目指すために、生活習慣の見直しは不可欠です。
今回は、日本高血圧学会(JSH 2019)および欧州高血圧学会(ESC/ESH 2023)のガイドラインを踏まえた、「血圧を下げる7つの生活習慣」についてご紹介します。(日本の高血圧ガイドラインは今年2025年改定予定です)
① 減塩(1日6g未満を目指す)
日本人の平均的な塩分摂取量は約10g。これは高血圧予防のための目標量(6g未満)を大きく上回っています。塩分を減らすことで、血圧が5〜6mmHg下がると報告されています。
☑ ポイント:
・加工食品や外食は塩分が多め
・減塩しょうゆや出汁を活用
・「味の濃さ=塩分」ではない(例えばポン酢は塩分が少なめ)
② 野菜・果物を増やす(DASH食)
DASH(Dietary Approaches to Stop Hypertension)食は、米国で開発された高血圧予防のための食事法で、果物・野菜・低脂肪乳製品が豊富です。カリウム、マグネシウム、食物繊維の摂取により、血圧が8〜14mmHg下がるというデータもあります。
☑ ポイント:
・緑黄色野菜や海藻類を毎食取り入れる
・果物は1日1〜2個を目安に(糖分過剰にならないよう注意)
③ 適正体重の維持・減量
肥満は高血圧と密接に関係しています。体重を1kg減らすことで、およそ1mmHgの血圧低下が期待されます。特に内臓脂肪型肥満は注意が必要です。
☑ 目標:BMI 25未満、腹囲 男性85cm未満、女性90cm未満
④ 有酸素運動の習慣化
ウォーキング、ジョギング、サイクリングなどの有酸素運動は、心臓と血管にやさしく、血圧を下げる効果があります。週に合計150分程度(1日30分×週5日)が理想です。
☑ ポイント:
・無理のない範囲で、できるだけ「毎日少しずつ」
・可能であれば「朝のウォーキング」が自律神経調整に効果的
⑤ 節酒(飲酒の適正化)
アルコールは少量ならば血管拡張作用がありますが、過剰な飲酒は逆に血圧を上昇させます。ガイドラインでは、男性で1日20〜30g、女性で10〜20gを超えないように推奨されています。
☑ 目安:ビールなら中瓶1本、日本酒なら1合程度まで
⑥ 禁煙
タバコは一時的に血圧を上げるだけでなく、血管を傷つけ、動脈硬化を進行させます。血圧コントロール以上に、心血管イベントの予防にとって禁煙は非常に重要です。
☑ 禁煙外来の活用も検討を
⑦ 睡眠とストレスの管理
慢性的なストレスや睡眠不足、睡眠時無呼吸症候群(OSA)は、交感神経を過剰に刺激し、血圧上昇の原因になります。睡眠は1日6〜7時間を目安に、規則正しい生活を心がけましょう。
☑ いびきが大きい、日中の眠気が強い方はOSAの検査も有効
おわりに
生活習慣の改善は、薬とは異なり自分自身の力で取り組める治療法です。薬を使っている方でも、生活習慣が整えば将来的に減薬や中止が可能になることもあります。
私たちのクリニックでは、患者さん一人ひとりに合った生活習慣のアドバイスを行っています。どんな小さなことでも気軽にご相談ください。血圧の安定は、人生の安定につながります。一歩ずつ、できることから始めましょう。
🧂【調味料:大さじ1杯(約15mL)あたりの塩分量】
調味料 | 塩分量(g) | 補足 |
---|---|---|
しょうゆ(濃口) | 約2.6g | 減塩しょうゆ:約1.3g |
みそ(赤味噌) | 約2.2g | 減塩みそ:約1.1〜1.5g |
料理酒 | 約0.4g | 塩分入りの「加塩タイプ」の場合 |
みりん風調味料 | 約0.1〜0.2g | 本みりんはほぼ無塩 |
ウスターソース | 約1.3g | 中濃ソースもほぼ同程度 |
ケチャップ | 約0.5g | 糖分が多く、塩分はやや少なめ |
ポン酢しょうゆ | 約1.2g | 減塩ポン酢は約0.7g程度 |
白だし | 約3.0g | 使用時は薄めるのが前提(要注意) |
顆粒だし(ほんだしなど) | 約1.5g(小さじ1杯で) | 製品により変動あり |
✅ 参考:食塩1g=ナトリウム約400mgです
🍱【主な料理1食分あたりの塩分量(目安)】
料理名 | 塩分量(g) | コメント |
---|---|---|
味噌汁(1杯) | 約1.2〜1.5g | 具・濃さによって変動大 |
ラーメン(スープ含む) | 約6〜7g | スープを残せば3〜4g程度に抑えられる |
うどん(汁あり) | 約5〜6g | つゆを飲まない工夫を |
焼き魚(塩サバなど) | 約2〜3g | 醤油や大根おろしでさらに塩分追加に注意 |
焼き鳥(タレ) | 約1.5〜2.0g | 塩だとやや少ない(1〜1.5g) |
煮物(筑前煮など) | 約2〜3g | 調味料の種類・濃さに注意 |
おにぎり(1個) | 約1.0〜1.5g | 具材(鮭・明太子など)により差 |
カレーライス(市販ルウ) | 約3.5〜4.5g | ルウの塩分が多め、1皿分でかなり高い |
冷ややっこ(醤油+薬味) | 約1.0g | 減塩醤油使用で0.5g程度に抑えられる |
🧠【実践のポイント】
- 1日6g未満を目指す場合、「1食2g以下×3食」が目安
- しょうゆや味噌は**「かける」より「つける」方が減塩になる**
- 「だし」や「酸味(酢、レモン)」を活用すると塩分を減らしても満足感を保てます